新茶の季節はステイ・ホーム?

庵原川と興津川に挟まれた地域に「広瀬・茂畑」というところがある。
先日訪れた吉原と同じく昔からお茶づくりが盛んで、質の良いお茶が生産される。
そんな山あいの地域に初めて自転車で行ってみた。

茂畑に向かうには袖師から広瀬トンネルを抜けるのがわかりやすい。

しかし、その広瀬トンネルは道幅は広いものの歩道がなく、カーブで見通しが悪いうえダラダラとした登り。おまけに省エネ目的なのか照明が意図的に落とされ真っ暗。
正直なところ積極的に走りたくない。

そのため今日は、横砂から波多打川沿いの道をたどり、トンネルをバイパスするルートを選択して走り出した。
しかし、もう少しで県道に合流するという地点で道路崩落により通行止め…。

今来た道を折り返し、通りたくないトンネルを通る羽目に…これなら最初からこちらを選べばよかった。

リアライトを2つ点灯して真っ暗なトンネルに突入。
幸いにも車の通りが少なく多少は緊張の糸がほぐれるものの、時折走り抜ける対向車の騒音がトンネル内を反響し冷や汗が背中を伝う。
通学の学生もここを利用するこの道。
理由はどうであれ、安全のためにトンネル内の照明をもう少し明るくできないものだろうか…。

ここからは茂畑から笹ノ峠までの川沿いの登坂道が続く。

激坂というような坂はないが平均斜度6%ほどの坂が続き、初夏のような陽気とともに、暑さ慣れしていない体から汗が噴き出す。

走り出しから40分ほどで茂畑に到着。
時間も早いこともあってか、新茶の季節にそぐわず集落は静まっている。
本当ならお茶摘みの作業でもっと賑わっているはずなのだが、コロナの影響か、それともお茶の需要が低下したことによる生産量減少の影響なのかはわからない。

茂畑の集落から笹ノ峠まであと一息。
道は細くなり、勾配も多少増すがそれほどでもなく、萌黄色に染まったお茶畑の間をヒルクライムする。

笹ノ峠を越せば急な下りを慎重に降り興津川沿いに出る。
昔懐かしい吊り橋…その昔父親に連れてきてもらったのがこの清地の吊り橋。
その頃は木造の吊り橋だったと記憶しているが、目の前のそれはスチール製。
進化したものだなぁ…と思うと同時に、いまだに吊り橋が活用されていることに感無量になる。

吊り橋を渡り、清地から和田島へと向かい、茂野島のあたりでコーヒー休憩。

いつもならこの時期は鮎釣りの人々でにぎわう河原も、新型コロナの影響でひっそりとしている。

川の流れの音を聞きながら一息ついた後は、吉原へと向かう県道へと自転車を進める。

まったく車が通らない山間の道を進む。
聞こえてくるのは私の呼吸音とタイヤが路面に擦れる音、それと鶯の鳴き声…。

世間がコロナだ…自粛だ…休業補償だ…と騒いでいるのが嘘のような平和な時間が流れる。

いつ終わるとも知らない新型コロナの感染拡大。
色々なところで歪を生み人々の体だけでなく心までも蝕んでいる。
これが終息したのち、世界は一体どうなっているのだろうか…そんなこと私ごときが考えてもどうにもならないが、せめて気兼ねなく外を歩けるような世界に戻ってほしい。
多くは望まない…。

吉原の集落を抜け、いつもは上っている伊佐布からの道を今日は下って伊佐布に至る。

ここからは日常の世界…。
多くの車が行き交い、人々が自粛要請の下とはいえ生活を営んでいる世界。

つい2時間半ほど前まで過ごしていた「道祖神」のある山間のゆっくりとした時の流れが、まるでひと時の心地よい夢だったのかと思わせてしまう街のせわしなさに包まれ、今日のサイクリングは終了した。

走行距離…約37キロ  休憩込み活動時間…2時間半