久しぶりに自転車に乗った

先日、正式な届けを提出し会社を退職した。

人工膝関節の磨耗・破損によるやむを得ない事情とはいえ、志し半ばの退職に悔やんでも悔やみきれない。
しかし、答えを出した以上はそれをとやかく考えるより、さっさと考えを切り替え将来のことを考えるようにするのが一番である。

というわけで、心の中に溜まった澱を少しでも軽くするため、本当に久しぶりに軽いサイクリングに行ってきた。

いつものように国道一号を東に向かう。

膝の痛みに加え、アスピリン不耐症による喘息の影響で息は上がり自転車は前に進まない。
これまでの1.5倍の時間を費やして由比の町まで走りコンビニでコーヒーブレイクとする。

これだけゆっくり走っているといろいろな考えが脳裏に浮かぶ。
会社を辞めたことはもちろんだが、これまでの人生での出来事などなど…。
ただ、事故の後遺症で過去のことをまだらにしか思い出せない事もあり記憶は途切れ途切れである。

特に小学生高学年から20歳頃までの記憶は欠落していることが多く、特に友人の顔や名前だけでなく、学生時代の楽しかったであろう思い出がすっぽり抜けているのには閉口する。

まあ、学生時代が楽しかったという保証はないので気に病むほどではないが、実際に過ごしてきた時間の記憶が抜けているというのは、目が覚めたら異次元の世界に降り立っていたような違和感というか恐怖を覚える。

スティーブン・キングの小説「刑務所のリタ・ヘイワース」に登場するブルックスではないが、長年刑務所に服役していたものが仮釈放で社会に出た時の恐れが、私の身に起きたことと似ているのかもしれない…(服役したことは無いが…)

一息ついたのち踵を返す。

難しいことを考えても仕方ないので、帰路はできるだけ頭を空っぽにし何も考えず「今のこの瞬間」を感じながらペダルを回す。
言わば「自転車に乗ったマインドフルネス」だ。

まあ、頭を空っぽにしようとしても煩悩の塊である私が物事を易々と悟ることなどできないが、勝手知ったる道でのんびりとペダルを回すことによって、少しはささくれた気持ちが落ち着いたような気がする。

仕事のストレス、接客業特有の悩み、足の痛みや障害、介護の不安…
色々な事に押しつぶされそうになっていたのかもしれない。

焦っても仕方ない。
図らずも取らざるを得なくなった無職の時間。家族や社会そして自分自身の将来を考えるための良い休憩時間であると考えるようにしよう。
どうせ、過去を思い出したくても思い出せないことの方が多いのだから…。