清水港ぐるっとポタリング(後編)

JR清水駅東口から国鉄清水港線の廃線跡をたどりながら、終点の三保駅に到着。
この先は三保半島の内陸部に入り、史跡や観光地などを巡ってみようと思う。

「清水港ぐるっとポタリング」前編はこちら→

まず最初に訪れたのが先の大戦末期に開発され、三保にあった海軍特攻戦隊に配備された「震洋」という特攻艇の格納庫
平和な今はトラックの車庫として利用されている。

ここ以外にも何か所か同じ格納庫の遺構があるものの、他は戦後の長い歴史の中で草木に埋もれ忘れ去られたり物置として利用されたりしていてアプローチが難しく、ここがその当時の様子を想起させるに一番ふさわしいところかもしれない。

次に訪れたのは伯良神社

三保と言えば「羽衣伝説」
ここは「天女が脱いだ羽衣を盗んでこれ幸いと嫁さんにした」とか「盗んだ羽衣を返す見返りに天女に舞を躍らせた」とかいうイケずな役どころの漁夫(伯良)が住んでいたといわれる場所にある住宅地の一角にぽつんとある神社だ。

由緒書きには「屋敷跡」と書いてあるが、ども見ても屋敷という広さとは言えないこじんまりとした祠だ。

次いで…羽衣伝説つながりで御穂神社へ。

平安時代の文書(延喜式)にも記されている神社で、羽衣伝説ゆかりの「三保大明神」として古くから信仰を集め、羽衣の切れ端が所蔵されているとのこと。

静岡周辺の大きな神社はからなずと言っていいほど徳川家康の名が上ってくる。
ここも家康公が壮大な社殿群を造営寄進したといわれているが残念ながらそれらは火災で焼失して今は残っていない。

境内から三保の松原(羽衣の松)に向けてまっすぐ伸びる参道は「神の道」として整備されている。

神の道に造られた木道を自転車を押しながら進むと「三保の松原」に到着する。

言わずと知れた世界文化遺産の構成遺産の一つで、世界遺産に指定されて以降は周辺の整備が着々と進んでいて洒落た飲食店や資料館ができたりしている。
しかし、松原入り口周辺に建つ土産物屋は「いかにも昭和の土産物屋」の雰囲気を残し、お茶からおでん、安倍川餅にソフトクリームとなんでもありという感じで、時代までごちゃ混ぜになっている。

自転車はここに預けて、砂に足を取られながら松林の中を進むと羽衣の松がある。

この松は三代目とのことで、そのわきには「羽車神社」の小さな祠がある。
羽衣の松に降臨した神がここから神の道を通って御穂神社に至るとのこと…ここもまた羽衣伝説にゆかりがある。

ここから先は三保半島の外側(駿河湾側)の自転車道を進む。

左には松林、右には富士山の眺めと何とも贅沢な自転車道…
しばらく進むと「三保灯台」にぶつかる。

この灯台は日本で初めて作られたコンクリート製の灯台とのこと。
真っ白い灯台が松の緑と空の青に映える。

この灯台周辺には清水海軍航空隊という予科練教育航空隊があったところ。
それとの直接の関係は無いのだが、三保飛行場と呼ばれた救難飛行等の目的で活用されていた飛行場がある(場外離着陸場)。
今は飛行場(場外離着陸場)としての運用が終了し、県営三保飛行場という名前のみ残っているが全く活用されていない何も無い草生した滑走路だけとなっている。

さて、先に進もう…。

飛行場脇から少し荒れ気味の遊歩道を進むと三保半島の先端部に突き当たる。

今もなお海水浴場という体ではあるけど、急深の海岸で危険なため海水浴場というより浜釣りのスポットとして人気。
この日も多くの釣り人が竿を握っていた。

しばし休憩ののち…
2023年3月いっぱいをもって一般公開を終了した「東海大学海洋科学博物館」の前を通って水上バス乗り場へと向かう。

この「東海大学海洋科学博物館」…三保の水族館は、静岡市民(清水区市民)なら一度は訪れたことのあるなじみのある場所。私も親に連れられて頻繁に着た思い出がある懐かしい場所だ。
現在は日にちを限定し事前予約をしたうえでの入館は可能らしい。

なお、さかなクンがさかなクンとなる前(修業時代)にここで研修をしていたらしい…
さかなクンの三保水族館紹介YouTubeはこちら・・・

さて、水上バスの乗り場「三保桟橋」に到着。
ほぼ1時間ごとに運航されている水上バスに自転車ごと載せて、出発地近くの江尻波止場までの30分ほどのクルーズタイム。

大人の料金が800円とちょっと高い気がするけど、水面ギリギリから見える富士山を借景とした清水港の景色もまた新鮮で、それだけの金額でも払う価値ありと私は思う。

途中、エスパルスドリームプラザのある「日の出桟橋」に立ち寄りながら「江尻桟橋」に到着。
ここは「清水魚市場 河岸の市」に隣接しているのでここでお腹を満たしてもいいしお土産を買い求めてもいい。

さて、出発地のJR清水駅東口はすぐそこ。
ほんの少しペダルを漕げば清水港ぐるっとポタリングはフィニッシュを迎える。

今回は時間の関係から途中で食事をとることができなかったけど、途中に和洋中の食事処がたくさんあるから、おいしいものを食べながらのんびりとサイクリングするのも良いかもしれない。

走行距離は20キロほどだからお子さん連れでも十分楽しめるかと思う。

気持ちの良い日和で、心洗われるサイクリングだった。